佐藤優さんと手嶋龍一さんの「クライナ戦争の嘘~米露中北の打算・野望・本音~」を読みました。佐藤さんが2022年から人工透析を週三回で受けているのは衝撃を受けました。また、一回の透析時間に4時間かかり、その時間を有効に活用されているのもびっくりでした。
気になった文について、少しだけ紹介します。
■日本のテレビや新聞で流されるニュース
大半がアメリカABCやCNN、イギリスのBBCといった欧米メディアを基にした二次
情報です。独自取材が少ないのは残念ですが、それならば、もう一方の当事者である
ロシアのメディアもしっかりチェックして、活用しないのはおかしい。
日本は、西側諸国の2次情報は流しますが、ロシアの一次情報は流さないですよね。そういった意味から情報操作されてるのでしょうね。
■ロシアとウクライナの「非対称な目標」
佐藤:戦争には当然「これだけの成果を取る」という目標があります。ウクライナ
の場合は、当初、2022年2月24日以前に戻せ、第2次ロシア・ウクライナ戦争
の前に戻せと言っていました。しかし、ゼレンスキー政権は屠龍からハードル
を上げたのです。要するに14年の第1次ロシア・ウクライナ戦争前の国境に戻
すという目標を掲げるようになった。
一方のロシアも、実はハードルを上げているのです。最初は実効支配してい
たドンパス地方、さらにはルハンスク、ドネツクの両州の住民を保護し、これ
を非軍事化することでした。これら2州の全域をロシアが獲得し、和平協定を
結べば、ゼレンスキー政権は倒れてしまいます。そう言う目標がパッケージに
なっていたんですね。
手嶋:プーチン政権は、こうした状況を踏まえて、22年10月5日、これら4州を強制
的に併合すると発表しました。
佐藤:ロシアの領土はルイ18世とかフリードリヒ2世が戦争によって獲得した比率
より大きくなったと、フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドが言って
います。要するに当初の目標を上回って達成したも同然で、その点でいつやめ
てもいい状態なのです。ただ、ヘルソン州、さらにオデーサ州まで手にできれ
ば、ウクライナの海岸線をすべて支配できる。プーチンとしては、ここまでき
たら、そこをゴールにしているのではないでしょうか。
戦争が始まると陣取り合戦になるのですね。ロシアは黒海周辺をすべて自国の領土に
する計画はびっくりしました。黒海の海運はロシアにとって肝ですもんね。
■ウクライナという国
ウクライナという国には、ロシアに近い「東ウクライナ」、首都キーウを中心と
する中間地帯、反ロシア色が濃い「ガリツィア」の三つの分断されている。
■「中立」を軸にしたウクライナの未来
手嶋:外交交渉の現場を数多く取材してきた外交記者と言えば、停戦のキーワード
は、“中立化”の外にはありません。ウクライナは、NATO加盟を申請しています
が、現時点ではNATOの加盟国ではない。形式的には中立国です。一方のロシア
も、ウクライナのNATO加盟阻止が戦争の大義名分です。もっとも、プーチンの
言う“中立化”、事実上の属国化です。“中立化”といっても、両者の内実には大きな
隔たりがある。しかし、外交とは、交わるはずのない平行線を交わったと表現す
る技なのです。
佐藤:ロシアとウクライナを和平交渉のテーブルに引き寄せる。私もキーワード
は“中立化”だと考えます。これなら、現の形の上ではいまのウクライナは“中立”な
のですから、それを誘い水にすればいい。双方の無理な妥協を強いる必要はあり
ません。
手嶋:将来のウクライナについてどんな和平の腹案を持っていますか。手札を少し
だけ見せてくれますか。
佐藤:“中立化”という観点から言えば、和平交渉が進めば、次のようなシナリオが
考えられます。今のウクライナが、歴史、宗教などが異なる三つの地域から成り
立っていることを考えれば、それぞれに“分離・独立”する。ロシアが支配しつつ
あるノヴァロシアについては、クリミア同様に、ロシアへの併合が固定化される
かもしれない。キーウなどのかつてのマロロシアは、中立国として独立する。さ
らに、歴史的にも、宗教的にも、ポーランドとの結びつきが非常に強い南西部の
ガリティア地方は、西側の一員となるのです。
佐藤さんと手嶋さんの対談集の中には、ヴァルダイ会議でのプーチン大統領の演説内
容、戦争のルールが書き換えられてゆく恐怖、教皇不可謬性の教義、台湾問題等、見ど
ころ満載です。テレビでは決して言えないし、理解するのには時間が必要と思いまし
た。国通しの過去をしっかり分析し、どのような条約が結ばれているかが重要なんだと
改めて感じました。