池上彰さんと佐藤優さんの「グローバルサウスの逆襲」を読みました。大変勉強にな
りましたので、少しだけ紹介したいと思います。
■グローバスサウスとは
これまでまがりにも「国際秩序」を提示してきたグローバルノースに対して、
グローバルサウスの特徴は「自国中心主義」です。自国のあり方、価値観、外交、安
全保障に外から口出しされたくない、というわけです。ヒト・モノ・カネの移動が自
由で国境の壁が低くなる「グローバル」よりも、国家間関係を重視する「インターナ
ショナル」の方が概念として適切と思う。
<略>
グローバルサウス諸国は、欧米の植民地にされていた過去を持つ国が多いので、い
まさら欧米的な価値観を押し付けられたくないという意識も強い。北半球に対する南
半球の逆襲であり、キリスト教に対するイスラムの逆襲であり、白人に対する有色人
種の逆襲でもある。
日本もグローバルサウスに対して、どのように外交していくかがキーポイントです
ね。本文では、日本外交の事も記載しています。
■したたかな日本外交~林外相の言葉~
本年のG7議長国として、国際社会の幅広い意見を聞き、G7での議論につなげていく考えです。
さらに、鉱物・食糧・エネルギー資源の宝庫でもある中南米諸国は、現下の国際情勢において、その重要性が増している。そうした観点から、ポテンシャルの高いこれ
らの国々との一層の二国間経済関係強化や各国の直面する課題への対応における協力
の方策についても意見交換を行う予定である。資源目的とはっきり言っている。
■独裁体制が世界の主流に
古代ギリシャの時代から、国の統治についてこう言われています。
初めは王様が治めているが、長くやっていると王様もズルくなるから、君主政は堕
落して僭主政になる。すると「こんな悪王は許せない」と、モラルの高い貴族たちが
政治を握る。モラルの高い人たちもやがて腐敗するので、今度は貴族政がが寡頭政に
なる。次は民衆の力がそれを倒して、民主政ができる。けれどもいずれ、衆愚政治に
なる。やがてまた、優れた王様が出てくる―――。
国家の体制はこんな形で循環する。
■政治に興味がなかった人が関心を持ち始めたら
政治に興味がなかった人が関心を持ち始めるのは、市民社会が壊れているときなん
です。市民社会において主流なのは代議制民主主義ですが、これは市民と政府が分業
体制ともいえる。政治は選挙によって選ばれた政治家と、資格制度によって登用され
た官僚によって行われます。それに対して、市民は、自分たちの経済や趣味や家庭な
ど、欲望だけ追求すればいい。市民は選挙などによって政府をチェックするだけでい
いんです。欲望を追及しているはずの市民が直接、政治の舞台へ出てくるのは、代議
制民主主義が機能不全を起こしているときなんです。
民主主義って難しいを継続するということは、難しいことなんですね。
■中国の九段線と十段線
中国は南シナ海すべてを自分の領海だと主張しているが、その根拠は「九段戦」です。
1947年に当時の中華民国が、地図の上に11本の短い波線を引いて南シナ海を囲み「この海は中華民国の領海だ」と宣言したが、世界は異を唱えなかった。そして、1949年
大陸に中華人民共和国が成立すると中華民国の領海はすべて現在の中国のものになっ
た、というのが、中国の主張です。その後、ベトナムに配慮して日本の線を消して9
本にしていました。
ところが、中国の自然資源省が2023年8月に発表した「標準地図」では、「9段戦」
からさらに広げた「十段線」が引かれていました。書き換えられた一本は、台湾の東
側、つまり台湾も中国の領有化に置く、としているわけです。中国が書き加えたの
は、これまでの地図の破線では台湾が中国領だという事が明確ではなかったからとい
う事らしいですが、台湾やフィリピン、ベトナム、マレーシアはもちろん、日本政府
も抗議しました。
なんとなく知っていると、しっかり勉強することは全然違いますね。
池上さんと佐藤さんの話は、ウクライナ戦争、イスラエルとガザを含め中東情勢につ
いて、西側諸国とロシアと中国について、台湾のこと、アメリカ大統領選のこと、日本
の外交姿勢等たくさん書かれていますので、ぜひ一度読んでみて下さい。
すごく世界が見えてきます。
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