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こころのカルテ~潜入心理師・月野ゆん~

 秋谷りんこさんの「こころのカルテ~潜入心理師」を読みました。看護師を経験された秋谷さんが希死念慮をなんとかして、取り払いたいとの思いでか書かれたのではないかと思います。勉強になった文章とあとがきを紹介させてもらいます。

 

■潜入心理師

 私は潜入心理師だ。通称は、潜入師と呼ばれている。五年前に認められたばかりの新しい資格で、潜入師による治療は、人の心の「核」に潜入し、【絡み】をほどくことにより、希死念慮を軽減することを目的としている。つまり、自殺を予防する専門職だ。
 まだ日本にしかない治療法で、潜入師は十人ほどしかいない。潜入治療を行える場所は全国でも数えるほどしかなく、私の勤めている精神科はそのうちのひとつだ。

 

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 希死念慮の強い人は、その核にある記憶をゆがませ、ねじらせ、絡ませている。それを【絡み】と呼んでいる。物理的に【絡み】をほどくために、心への潜入方法が研究されてきた。心には脳にある脳波と同じような心派というものが存在する。

 

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 潜入師は離職率が高いらしい。自分の負担になるだけでなく、それが患者の治療に悪影響を及ぼすかもしれないなら、辞めたくなるのも道理だ。

 

 そんな素晴らしい職業があれば素晴らしいですね。ただ、潜入するには注射をしないといけないので、毎日注射して血管大丈夫かな?って思うのは、私だけかもしれませんね。

 

■あとがき
 私は13年ほど、精神科の看護師として働いていました。当時から感じていた思いや葛藤、喜びなどを表現したくて、医療現場を舞台にした小説を書いています。
精神科にご入院される患者様にはいろいろな症状がありました。不安、不眠、幻覚、妄想……。なかでも、一番厄介な症状が、死にたい気持ち、つまり「希死念慮」ではないかと思います。
 自死で亡くなる方は、毎年2万人以上います。自ら死を選ぶ人は心が弱いと言われることがありますが、本当にそうでしょうか。実は、本人の意思や心の強さと全く関係なく、症状としてあらわれるものがほとんどです。


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 どれだけ医療が手をつくしても、自死で亡くなる方はいらっしゃいます。そのたび、悲しくてやるせなくて、どうしようもなく落ち込みました。癌を気合で治すことと同じ、と書きましたが、自死は行動を起こさせなければ防げる、という違いがあります。


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 死にたい気持ちが目に見えたら。いつもそう思いながら働いていました
 目に見えて、手で触ることができて、確実に治すことができたらどんなに良いだろう。でも、現在の医学でそのようなことはできません。
 本作は、人の記録の中に直接潜入し、死にたい気持ちの解消につとめる架空の専門職「潜入心理師」が活躍します。この設定に、看護師時代から持ち続けた強い願いを込めました。
 主人公の月野ゆんには、この仕事を志した強い動機があります。それは月野自身のつらい記憶でした。自分の過去と向き合いながらも、希死念慮で苦しむ人々の力になりたいと頑張る月野を、一緒に応援して下さるとうれしいです。
 いつか医療がもっと進歩して、精神疾患のより良い治療法が見つかると信じています。
 そして、今死にたい気持ちのある方へ。それはあなたのせいではなく、症状として思わされているだけです。必ず誰かに相談し、どうか自分を責めたりせず、穏やかな時間が過ごせますよう願っています。また、死にたいと言っている人が身近にいる方へ。けっして「心が弱い」などと言わず、まずはつらい気持ちに寄り添ってあげてください。そしてなるべく早く医療へつながるころができるよう、手を貸してあげて下さればと思います。

 

 絡みもいろいろな種類があるんだな?って思いながら読んでました。

次回作も楽しみにしてます。